実家がゴミ屋敷…相続放棄すべき?判断基準と手続き、注意点を解説

ゴミ屋敷

突然の相続話に戸惑っていたら、なんと実家がゴミ屋敷だった──そんな状況に直面すると、多くの人が「本当に相続して大丈夫なのか?」と悩みます。清掃費用、資産価値の低さ、近隣とのトラブルなど、単なる「家の問題」では済まされないリスクがそこに潜んでいます。
本記事では、以下のようなポイントを明確に整理しながら、相続放棄という選択肢について詳しく解説します。

  • ゴミ屋敷にかかる具体的な負担とは?
  • 相続放棄で本当にリスク回避できるのか?
  • 手続きの注意点と他の選択肢は?

相続財産に「ゴミ屋敷」が含まれる場合の問題点

ゴミ屋敷が相続財産に含まれる場合、資産価値の低下や清掃費用の負担、近隣住民とのトラブルなど複数の問題が発生します。相続を受ける前に、これらのリスクを正しく把握しておくことが重要です。

清掃・撤去にかかる莫大な費用負担

ゴミ屋敷を片付けるには、想像以上の費用が発生する可能性があります。
通常の空き家清掃の費用相場は数十万円程度ですが、ゴミ屋敷ではゴミの量や種類によって、数百万円に達するケースも少なくありません。 特に、家電リサイクル法の対象となる製品(冷蔵庫、洗濯機など)や、処分が難しい特殊なゴミ(スプレー缶、塗料、農薬など)が大量にある場合、専門業者による分別、収集、運搬が必要となり、費用が大きく増加します。
また、悪臭や害虫が発生している状況では、別途、特殊清掃や害虫駆除の費用が発生することもあります。 これらの費用は、通常の遺品整理などと比較して高額になることが多く、事前に見積もりなどを確認しておくことが重要です。
エーエムティーでは、産業廃棄物や家庭系ゴミの収集運搬を行っております。

売却や賃貸が困難な資産価値の問題

ゴミ屋敷化した物件は、資産価値が大きく下落する可能性があります。
不動産の価値は一般的に土地と建物の状態によって評価されますが、ゴミ屋敷の場合、建物の劣化が著しく、再利用が困難となるため、土地としての価値が主な評価対象となります。買い手や借り手を見つけることが難しくなるのが一般的です。
いわゆる心理的瑕疵物件と同様に扱われることもあり、周辺の相場価格よりも大幅に低い価格でしか売却できない事例も報告されています。
このように、ゴミ屋敷は不動産としての価値を大きく損なう可能性があり、相続などを検討する際には慎重な判断が求められます。

近隣トラブルや行政指導のリスク

ゴミ屋敷は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼし、近隣住民とのトラブルの原因となる可能性が高いです。
害虫や害獣の発生、悪臭、火災のリスクなどにより、近隣住民から苦情が寄せられることが多く、放置すると自治体から指導や勧告を受けることもあります。多くの自治体では、住環境を守るための条例や指導要綱が定められており、状況によっては立ち入り調査改善命令が出されることもあります。
また、ゴミ屋敷が原因で火災が発生した場合、責任を問われ、近隣住民から損害賠償を請求されるリスクもあります。特に、空き家で電気をつけたまま放置すると、電気火災が発生する可能性があり、自治体や消防から注意喚起が行われています。
相続人が不在のまま放置されている場合でも、管理責任は誰かに帰属するため、対策を講じなければトラブルが深刻化することは避けられません。

管理責任と精神的な負担の発生

ゴミ屋敷の相続は、単なる不動産取得に留まらず、日々の管理と精神的負担も伴います。
相続人は、民法に基づき相続財産の管理責任を負います。具体的には、物件の倒壊や火災を予防するための適切な管理、害虫の駆除、近隣住民からの苦情への対応などが含まれます。相続した物件に居住しない場合でも、管理を怠ると、損害賠償責任などを問われる可能性があります。
また、物件に足を踏み入れるだけでも強いストレスを感じる人も多く、親族間での処理方針を巡る争いが発生するケースもあります。こうした状況が長期化すると、相続人の生活にも悪影響が及ぶ恐れがあります。
精神的な負担が大きい場合は、専門業者への早期相談や、相続放棄を視野に入れた対応が必要です。

相続放棄でゴミ屋敷の負担を回避する仕組み

相続放棄を選択すれば、ゴミ屋敷に関する清掃・管理・修繕といった負担を回避できます。この制度の基本的な仕組みと、実際に放棄することで得られる法的効果について詳しく見ていきましょう。

相続放棄とは?資産も負債も一切引き継がない制度

相続放棄とは、家庭裁判所に申述することによって被相続人の財産を一切承継しないという制度です。
この手続きを行うことで、被相続人の財産に対する所有権も責任も発生しなくなります。相続が開始したことを知った日から3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出し、認められる必要があります(民法第915条:民法 | e-Gov 法令検索)。
注意点として、放棄が認められれば、現金や不動産などの有益な財産も含めて一切相続できません。また、一度放棄が認められると原則として撤回はできません。
この制度は、明らかに負債やリスクが大きい財産を放棄したいとき、あるいはゴミ屋敷のような維持管理コストが見込まれる不動産を回避したいときに、有効な選択肢となります。

ゴミ屋敷の管理義務や清掃費用から法的に解放

相続放棄が受理されれば、ゴミ屋敷に関する一切の責任と義務から法的に解放されます。
相続を放棄すると、その財産は最初から相続人でなかったものとして扱われるため、不動産の管理、修繕、処分、清掃といった業務の義務がなくなります。たとえその建物が著しく劣化していたり、近隣住民から苦情が来ていても、相続放棄者には対応義務が生じません。
また、ゴミの中に産業廃棄物や特別管理物(医療廃棄物、劇薬など)が含まれていた場合、これらの適正処理には専門業者の介入が必要で、費用も高額になります。相続放棄によって、そうした複雑な処理義務からも免れることができます。

ゴミ屋敷を理由に相続放棄するメリット

相続放棄によってゴミ屋敷を含む不動産を引き継がなければ、経済的な負担や精神的ストレス、さらに法的責任からも解放されます。

経済的負担からの完全な解放

相続放棄を選択した場合、清掃費や修繕費などの経済的負担を一切負う必要がありません。
一般的なゴミ屋敷の片付けには、数十万円から百万円を超える費用がかかるとされています。さらに、建物が老朽化していれば、倒壊防止の修繕費や、場合によっては解体費用も必要になります。解体費用は、木造住宅であっても坪あたり数万円が相場であり、一般的な広さの家屋であれば数百万円に達する可能性もあります。
加えて、ゴミの中に特別な処理が求められる廃棄物が含まれている場合、追加の費用が発生します。これらの費用はすべて、相続を受けた人の負担となります。
相続放棄を選択することで、こうした経済的なリスクを事前に排除できるのは非常に大きなメリットです。将来的な出費を見込めない人や、遺産全体がマイナスの可能性がある場合には、放棄によって損失を回避できます。

時間的・精神的ストレスからの解放

ゴミ屋敷の片付けや管理には、相当な労力と精神的な負担が伴いますが、相続放棄を選択することで、これらの負担から解放されます。
実家がゴミ屋敷となっている場合、親族間で責任の所在を巡る対立が生じやすく、精神的な疲弊を招きます。さらに、行政や近隣住民からの苦情への対応、清掃業者との打ち合わせ、各種手続きの調整など、時間的な制約も大きな負担となります。
さらに、行政や近隣住民からの苦情への対応、見積もり業者とのやり取り、各種手続きの調整など、時間的な拘束も大きな負担です。特に、遠方に住んでいる場合や、仕事や育児で時間が取れない場合には、物理的に対処が不可能なことも少なくありません。
相続放棄を行うことで、これらの手間や精神的な苦痛から解放され、他の親族の生活への影響を最小限に抑えることができます。問題を早期に解決するためには、現状を客観的に評価し、感情に左右されない冷静な判断が必要です。

ゴミ屋敷に関連する法的責任リスクの回避

ゴミ屋敷に伴う法的責任を一切負わずに済む点も、相続放棄の重要なメリットです。
たとえば、放置されたゴミ屋敷が原因で火災が発生した場合、その所有者や管理者は損害賠償責任を問われることがあります。過去の裁判例においても、管理不十分な空き家が火元となり、近隣の建物に延焼した事例で、元の所有者に賠償が命じられたケースが存在します。
また、自治体によっては空き家対策に関する条例に基づき、危険な状態の空き家や不良住宅として改善の勧告や命令が出されることがあり、行政処分を受けるリスクもあります。これらの命令に従わない場合には、強制的な撤去や行政代執行が行われ、その費用が請求されることもあります。
相続放棄をしていれば、これらの法的リスクの当事者となることを避けられるため、安全に問題を回避できます。法的トラブルを避けたい場合や、相続財産の管理が困難な状況にある人にとって、非常に現実的かつ有効な選択肢です。

参考:空き家対策/千葉県

相続放棄のデメリットと必ず確認すべき注意点

相続放棄は多くの負担を回避できる一方で、すべての財産を手放すことになるため、事前に慎重な判断が必要です。また、法的に無効となるケースや、他の親族に影響が及ぶ可能性もあります。

全てのプラス財産をも手放す選択

ゴミ屋敷だけでなく、被相続人の持つ他のあらゆる財産を一切相続することができなくなります
たとえば、預貯金、有価証券、受取人が相続人として指定されていない生命保険金、貴金属、価値のある土地などが相続財産に含まれていたとしても、相続放棄の手続きを行うと、これら全ての財産を受け取る権利を失います。
民法の規定により、相続放棄は包括的な行為とされており、特定の財産のみを選んで放棄することは認められていません(民法第939条:民法 | e-Gov 法令検索)。したがって、ゴミ屋敷が存在する場合でも、他の資産だけを個別に相続するという選択肢はないのです。
そのため、相続放棄を検討する際には、被相続人の全ての財産を調査し、プラスの財産とマイナスの財産の総額を正確に把握することが非常に重要です。相続手続きに詳しい弁護士や司法書士に相談し、財産目録を作成した上で、慎重な判断を下すことが推奨されます。

一度手続きすると撤回は原則不可能

相続放棄は原則として一度手続きを完了すると、後から撤回することはできません
家庭裁判所において相続放棄の申述が受理され、その決定が確定すると、その効力は絶対的なものとなり、「やはり相続したい」といった個人的な理由での取り消しは認められません。ただし、例外的に、詐欺や強迫によって相続放棄の意思表示がなされたと認められる場合には、その無効を主張することができますが、これは極めて限定的なケースに限られます(民法第96条:民法 | e-Gov 法令検索)。
したがって、相続放棄を選択する際には、相続財産の内容を詳細に調査するだけでなく、他の相続人との関係性や、ご自身の今後の生活設計を十分に考慮した上で、慎重に判断を下す必要があります。
「清掃費用がかかるから放棄しよう」と安易に決めてしまうと、後になって多額の財産が存在することが判明した場合に後悔することになりかねません。できる限り、弁護士や司法書士などの専門家の意見を聞きながら、慎重な準備を進めることが重要です。

次順位の相続人に権利と負担が移る可能性

相続放棄を選択すると、その相続権は次順位の親族へと移るため、結果として他の家族に負担を負わせてしまう可能性があります。
たとえば、被相続人の配偶者と子が共に相続放棄をした場合、次に相続権を持つのは被相続人の直系尊属(父母など)、その直系尊属もすでに亡くなっていれば、被相続人の兄弟姉妹へと相続権が移ります(民法第887条〜889条:民法 | e-Gov 法令検索)。この際、次順位の相続人が相続に気づかずに放置していると、予期せぬ財産管理責任が生じてしまう可能性もあります。
特に問題となるのは、複数の相続人が連続して相続放棄をした結果、誰も管理する者のいない空き家が残ってしまうケースです。このような場合、空き家の適切な管理が行われず、地域の防災や衛生上の観点から危険な状態となり、最終的には自治体が対応に追われる事態となることがあります。

相続放棄前に「相続財産の処分」とみなされる行為は厳禁

相続放棄を検討する際には、放棄前に相続財産を「処分」する行為を行うと、相続放棄が認められなくなる可能性があります。
えば、ゴミ屋敷の中から価値のある家電製品や貴金属などを持ち出して売却したり、ご自身の費用で清掃業者に依頼して一部を片付けるといった行為は、法律上「相続を承認した」とみなされるおそれがあります(民法第921条:民法 | e-Gov 法令検索)。このような場合、単純承認が成立し、法的には相続人として被相続人の一切の権利義務を承継することになります。
どのような行為が財産の処分に該当するかは個々の状況によって判断が難しい場合があるため、相続放棄を検討している段階では、原則として相続財産には一切手を付けないことが重要です。どうしても財産の一時的な管理が必要な場合には、ご自身で判断せずに、事前に家庭裁判所や弁護士などの専門家に相談し、適切な助言を得ながら慎重に行動するようにしてください。

相続放棄以外の選択肢の検討

ゴミ屋敷の相続は必ずしも放棄だけが唯一の選択肢ではありません。状況によっては、専門業者への依頼や売却、限定承認といった他の方法でリスクを最小化することも可能です。

相続して専門業者に片付け・清掃を依頼

ゴミ屋敷を相続し、専門業者に清掃を依頼することで、負担を抑えつつ資産として再生させる道もあります。
特に、土地の立地条件が良い場合や、建物の構造が比較的しっかりしており再利用の見込みがある場合には、専門業者による清掃によって物件の資産価値を回復できる可能性があります。たとえば、成田市富里市など、交通アクセスが良いエリアでは再販売や賃貸への転用も十分視野に入ります。
ゴミ屋敷の清掃を専門とする業者は、廃棄物処理法に基づいた許可を取得しており、一般家庭から出るごみだけでなく、事業活動に伴うごみも法令に従って適切に分別、収集、運搬、処理を行います。
ご自身で清掃を行うには多くの時間と労力が必要となりますが、専門業者に依頼すれば比較的短期間で作業が完了します。費用は発生するものの、ゴミ屋敷を将来的に資産として活用することを考慮すれば、ゴミ屋敷の資産化を前提にすれば、長期的には経済的な選択になることもあります。

現状有姿(相続してゴミ屋敷のまま)で売却

片付けずに「現状有姿(げんじょうゆうし)」のままで売却する方法も、実際には広く行われています。
現状有姿とは、「現状のまま、補修や清掃などを行わずに物件を売却する契約形態」です。購入希望者にとっては、物件の状態に関するリスクがある一方で、通常よりも低い価格で購入できるため、解体を前提とする業者や不動産投資家からの需要があります。特に、空き家対策に力を入れている自治体では、空き家バンクへの登録や、自治体による仲介支援を受けられる場合があります。
ただし、建物が倒壊の危険性がある場合や、不法投棄されたゴミが大量にあるような場合には、売却前に最低限の清掃が必要となることもあります。また、現状有姿での売却であっても、固定資産税や維持管理の費用は発生するため、早期に買い手を見つけるための努力が必要です。
現状売却を行うには、不動産業者との連携が不可欠ですが、清掃費用をかけずに済むという点で初期費用を抑えることができ、相続放棄せずに経済的価値を得る手段の一つです。

プラス財産の範囲でマイナス財産を弁済する「限定承認」

ゴミ屋敷を含む財産に対して「限定承認」を選択することで、プラス財産の範囲内でのみ負債を清算するという方法も存在します。
限定承認とは、相続によって得た財産のうち、借金やゴミ屋敷の処理にかかる費用などの負債があったとしても、相続したプラスの財産の価額を上限としてのみ責任を負う制度です(民法第922条:民法 | e-Gov 法令検索)。相続によって得た財産のうち、借金やゴミ屋敷の処理にかかる費用などの負債があったとしても、相続したプラスの財産の価額を上限としてのみ責任を負う制度です。
この方法を選択するには、相続人全員が共同で家庭裁判所に申述する必要があり、単独での申請はできません。また、相続財産の全体像を正確に把握し、詳細な財産目録を作成しなければならないため、相応の手間と専門的な知識が求められます。
とはいえ、「価値のある財産も相続したいが、同時にマイナスの財産に対する責任範囲を限定したい」といった状況においては、限定承認は有効な選択肢となり得ます。

ゴミ屋敷の片付けのご依頼はエーエムティー

ゴミ屋敷の片付けは、放置すればするほど状況が悪化し、清掃コストや近隣トラブルのリスクも高まります。相続するか放棄するかの判断に迷っている場合でも、まずは専門業者へ相談することで、選択肢を広げることができます。

法的な手続きについては、弁護士、司法書士、行政書士等の専門家へご相談ください。

エーエムティーは、成田市、匝瑳市、旭市、富里市、多古町の5市町にて許可を受けた廃棄物収集運搬業者です。家庭から出る一般ごみのほか、空き家やゴミ屋敷の片付けに伴う雑多な廃棄物や、缶類、古紙、電化製品などにも対応しています。